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さようなら さようなら、私の世界。 ありがとう。 忘れることはないけれど 私はあの人と生きることを選んだの。 さよならの言葉 3 『さよならを言う覚悟だよ』 四代目様にそう言われて、元の世界に戻ってきた場所は 間違いなく、以前住んでいたアパートの一室だった。 「ホントに・・・戻ってきたんだぁ。」 不思議と懐かしく感じることに、 は少しおかしくなって絨毯に座りこんだまま苦笑した。 「人生のほとんどこの世界で生きてきたのにね、・・・変なの。」 たった1年木の葉の里に居ただけで、 あの人のそばにいただけで こんなにも簡単に心が離れてしまうなんて。 こうしちゃいられない。 私に与えられた時間は1週間。 「待っててくださいね、カカシさん。」 感慨に浸るのもそこそこに、は立ち上がりさっそく出かける準備を始めた。 「あの、・・・・あなたは?」 が話かけると、黄金色のたんぽぽのような頭をした綺麗な人は 「ようやく話が出来る。俺は、四代目火影です、さん。」 実際の年齢よりも、幼く見える笑顔を見せた。 笑うと余計に誰かに似ているような気がしてしまう。 「四代目火影様がどうして、私の夢に?というか、・・・これは夢なんですか? やけに意識がはっきりしているような気がするんですけど。」 「ん、確かに夢は夢なんだけどこれは俺がさんにかけた術のうちでね。」 それから四代目様は、これから起こる出来事を分かりやすく簡潔に述べた。 「これから元の世界に戻ってもらうよ。」 「・・・え・・・??そんな、どうして・・・・」 戸惑う私に、四代目様はゆったりと落ち着いて微笑むと 「さよならを言って欲しいんだ。」 その言葉が、私の奥深くに突き刺さる。 そんな、 ・・・・だって 「早とちりしないでね?」 「え?」 「俺がさよならを言って欲しいのは、カカシじゃなくて。」 「君が生きてきた世界全てに、だよ?」 「・・・私が生きてきた世界、・・・すべてに?」 「そう。」 ただ真っ白な空間で、 お互いの存在だけが異様に浮き出て見える。 「戻るのは君の世界の基準で1週間だけ。つまり、これから死ぬまで木の葉にいて欲しいってこと。」 ずっと、どこか消えない不安。 自分がいつカカシさんの前から消えてしまうのだろう、と。 それを与えたこの人は、 今度は永遠に取り除いてくれるのだという。 「いつまでたってもどっちつかずじゃ、さんも落ち着かないだろうしね。どっちかに決めてもらおうと思って。」 「返事は今さら聞くまでもないよね?」 「は、はい!もちろん・・・です。」 は、長い間みてきたこの夢がもたらすものに どこかホッとして。 でもやっぱりどこか少し不安だった。 「聞いてもいいですか?」 「ん、なんだい?」 「どうして四代目様がこんなこと?」 四代目様は私のその問いを聞いて、少し曖昧に笑った。 「・・・カカシに・・・幸せになってほしくてね。」 その横顔は、が見てきた今までの忍のうちの誰よりも悲しみに溢れていて。 だけどおんなじくらい優しくて。 あぁ、この人も苦しいんだ。と思ったけど。 木の葉に来て初めて、置いてく側の言葉を聞いたなとも思った。 「カカシをひとりぼっちにしておけなくてさ?」 さっきの痛々しい表情はどこへやら。 今度はイタズラっぽく笑う。 「それで四代目様が残した術で私を木の葉の里に?」 「そ。まぁ、上手くいくか分からなかったし色々偶然が重なったのもあってどうなるかは運次第だったんだけどね? 誰でもよかった、なんて言ったら聞こえが悪いけど。木の葉も忍すらも知らない異次元の人間なら、それでよかったんだよ。」 「だけど・・・それが例えば木の葉に害を及ぼす人間だったらどうするんです?」 簡単に穴が見つかるその考えに、心底は心配になった。 しかし、あっけらかんとミナトは笑う。 「そんな奴、尚更カカシが放っておかないでしょ?」 初めてカカシと出会った時に、何かあったら殺すと言われたことを思い出す。 「・・・まぁ、確かにそうかもですけど。」 「さんが、というかその飛ばされてきた人が来てからちょうど1年の今日。 その人が無事生きていれば、俺が1度だけこうして現れるようになっていたんだよ。」 生きていれば・・・って。 案外この人無茶苦茶だな。 「あは、あははは・・・」 笑いながらも、自分の顔がひきつっているのが分かる。 「さぁーて、そろそろいい時間だよ。あんまり引き止めるとカカシに怒られちゃうし。」 「時間って・・・目が覚めたらすぐにもとの世界に戻るんですか?」 「そうだよ。でも、本当にそれでいいの?・・・って、勝手に連れてきた俺が言うのもなんだけど。」 迷いはない。 だって、カカシさんのそば以外に自分が生きていく場所なんて これから先、見つかる気がしない。 「確かに、1週間後カカシさんの元に帰してくれるんですよね?」 確かめるように、 少し挑戦するように見つめるその瞳に。 ミナトは心底嬉しくなった。 「ね、さん?」 「はい?」 「俺が術をかけた場所、どこだと思う?」 別れ際、唐突に投げつけられたミナトからの謎かけには。 「え?あ、あの四代目様?」 「カカシの部屋で俺がいる場所を探してごらん?」 それじゃあ、カカシをよろしくね。 「ちょ、ちょっと!」 たんぽぽみたいな黄金色が揺れる。 あぁ、目が覚める。 確かに、貴方を信じていいんですよね? 応じられなかった私の問いは、 目が覚めて見つけたカカシさんのベッド上にある写真たての中に 答えを見つけた。 そこに居たんですね、四代目様。 で、カカシさんの先生? いってきます、カカシさん。 帰ってきたらただいまって言いますから。 そしたらお帰りって言ってくださいね? 「!!!・・・・そんな、なんで?!・・・・行くな!・・・行かないでくれ・・・。」 目が覚めると、すでに私の身体は元の世界に戻り始めていた。 消えていく身体。 カカシさんが、必死に私を引きとめようとすがる中 私には待ってて、と言うことしか出来なかった。 もっと他に色々ちゃんと言えばよかった。 心配をかけるようなことばかりして。 「・・・私、ほんとダメだなァ。」 こちらの世界に戻ってから、木の葉の里へと移り住む準備を着々と進める。 実家へは帰ったけれど結局何も言えずに、そのままアパートへと戻ってきてしまった。 元々昔からそれほど私に興味を持っている風でもなかった父と母。 子どものころから、父は仕事のことで頭がいっぱいで母はそんな夫に目を向けてもらおうと必死だった。 それは父が定年を迎えた今も変わることがなく。 世間体だけで生まれた子どもは、成長するたびにその関心はゼロへと限りなく近づいていった。 「でも私がいなくなったってなったら、それなりに悲しい思いはさせちゃうかな。」 ごめんね、お父さんお母さん。 私、帰りたいって心の底から思える場所が出来てしまったの。 ・・・・あなた達のところよりも。 滞在時間も残りあと2日となり、随分と部屋の物も減った。 がらんとしている部屋の真ん中に、は膝を抱えてポツリと座り込む。 「はやく皆に会いたいなー。ってか、これで木の葉に帰れなかったらシャレになんないよね。」 たった数日離れているだけで、こんなにも心もとない。 以前は平気だった1人ご飯も味気なさに、食欲がわかなくなったり 隣にカカシさんがいない布団が冷たく感じてあまり眠れない。 カカシさんがいないときにそばにいてくれるムサシくんもいない。 ・・・カカシさんの任務を待ってる時とは全然違う。 今度はこちらの世界で帰れなかったらどうしよう、と不安になる。 「やっぱ・・・変なの。あ、そっかこれがホームシックってヤツ?」 生まれて初めてそのようなものにかかった。 帰ったらカカシさんに話そう。 って、向こうで待ってるカカシさんのほうがツライかな。 こっちの1週間って向こうではどれくらいなのかな。 あ〜〜〜気持ちがぐちゃぐちゃする。 この部屋に、自分ただ1人でいることがこの世の終わりみたいに寂しい。 たった1週間。 あと2日で逢えるのに 「あーもう。・・・・カカシさんに・・・・逢いたいよぉ。」 むなしく響く自分の声に、 余計悲しさが増して誰も見ていないのに隠れるようにして泣いた。 ・・・・ヒロインの性格変わってる気がします(汗 家族設定とかあまりしないほうがいいのかなーとも思ったのですが、 話の流れ上どうしようもなく・・・暗いのはあまり気にしないでください。 これで感情移入しづらくなったらごめんなさいね。 ちょっと悲しいかんじにもなってしまいましたね。 言うことコロコロ変わってますよね、続編はちょっと行き当たりばったりなんですねー。 やっぱ1話完結のほうがいいのかなぁー。でもそうなるといつまでたっても更新できなーいww |